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作品の表題
皐月晴上野朝風 (さつきばれうえののあさかぜ)
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役名
天野八郎
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コマ絵
初世 市川左團次の 天野賢次郎
解説
1868年の上野戦争を描いた作品。本図に描かれた天野八郎は、鳥羽・伏見の戦い後、再起を目指す幕府急進派の一員として、渋沢成一郎らとともに彰義隊を結成し、副頭取となる。渋沢脱退後は頭取となり、大村益次郎率いる官軍を相手に上野寛永寺を本拠に置いて新政府軍に徹底抗戦しようとした。新政府軍に敗れた後、市中に潜んで再起を図ったが、密告で捕われ、獄中生活五か月余で病没した。戦没者の二十三回忌ということもあり、世情も落ち着き、明治政府も武士の時代に逆戻りしない自信が付いていたため上演できたと考えられる。また、当時の関係者も存命で、かなり前評判がよく、江戸と呼ばれた時から東京に住んでいた人々には涙を誘ったと言われる。